福音
アカデミーが終わる頃には風が冷たくなる。
もう冬だな、とイルカは呟いて小さく息を吐き出した。
季節の変わる、この匂いがイルカは大好きだった。
春から夏、夏から秋。
そして秋から冬。
子犬の様に鼻でくんくんと吸い込んだ。
----カカシ先生もこの匂いを感じてるかな。
赤い夕日を見上げる。
なんでだろう。
気が付くと、頭の中はいつも彼のことを考えてしまっている。
明日、明後日。帰って来るのはもうすぐ。
それだけで心が手で握られたような。
そんな自分に恥ずかしくなり少し顔が熱くなる。
本当だったら、彼と共に任務に出ている元教え子の事を考えていたはず。
経験も能力も少ないのはあの子達の方で、確かに心配はしているのだけど、それよりも先にあの人の顔が、声が、心の中にあって。
何考えてんだか。
歩きながら小石を蹴って道の端に飛ばす。
カカシの声がすごく好きだ。
低く、優しいトーンの声。
囁かれただけで、心の奥に染みわたって甘い痺れが背中を流れる。
自分を抱く時、まるで呪文のように耳元で囁く。
『好きです』
『好きです』
『愛してる』
その声を思い出して、頭のから背中へ。熱い塊が降りてくるようだった。
その言葉に自分は何も返していない。
俺もです。って、言うのは簡単なはずなのに。
カカシに言われただけで、胸が一杯になる。
自分の気持ちを、カカシは分かっているんだろうか。
ただ、一緒にいるだけでいいんだろうか。
それで、幸せなんだろうか。
そう言えば。
3日会っていない。
3日も声を聞いていない。
3日もあの人の熱を感じていない。
待っていればもうすぐ帰ってくるのに。
突然気分が暗くなった。
情けないと思う。
カカシの前では強がって、彼の想いを嫌々受け入れてるみたいな態度をとって。
本当は、カカシ先生が俺を想う以上に、彼に心を奪われている。
そんな自分を悟られるのが怖いんだ。
同じように甘えればいいのに、それがまだ出来ないでいる。
自分の前にいるカカシが全てでは無いと分かっている。
限られた表情しか見ていないと思うし、感情だってそうだ。
きっと。自分よりは遙かに大人だと思う。
恋愛に関しても自分より経験がある。
自分の、この莫迦のようなカカシへの想いが伝わったら、飽きてしまうんだろうか。
くだらない。
駄目だ。
ふるふると、イルカは頭を振った。
子供の頃から、悪い方へ悪い方へと考えてしまう癖がある。
自分が傷つくのが怖いから。
自己防衛の為に。
早く会いたい。
会えばきっとこんな気分が砕かれる。
会って、優しく抱きしめて欲しい。
あの声で、自分を呼んで欲しい。
『イルカ先生』
そうなんだ。自分の名前を呼ぶ。それがすごく心地良い。
『イルカ先生』
薄くて形のいい唇。
抱かれる時はすごく熱い。
熱を持ったあの唇が、自分の名前を囁く。
『イルカセンセイ』
『・・・イルカセンセイ』
この声がすごく好きなんだ。
「イルカ先生」
「・・・え」
前にカカシが立っていた。夕日が堕ち始め、辺りも暗くなっている。
本当にカカシが目の前にいる。
ドクン、と心臓が一気に血を駆けめぐらせた。
「か、カカ、シ先生・・・いつからそこに・・?」
イルカの言葉に、目尻を下げて安心したような顔をした。
「さっきからイルカ先生を何回も呼びましたよ。なのに、難しい顔して、気づかないから」
少し距離をおいた場所からイルカの前まで歩き出す。
ドクン ドクン
イルカの心知るわけでもないカカシは、嬉しそうな顔をしている。
ぎゅうと拳を胸の上に置いたまま、イルカはカカシを見つめていた。
ああそうだ、とカカシの唇が口布の下で動いたのが分かった。
「ねえ、早めに任務が片づいたんです。久しぶりにどっか食べに行きます?」
ドクン
「それか、イルカ先生の家にしますか?今回の任務で暖かいご飯全然食べれなくて。俺はどっちでもいいですけど」
いつもより、カカシは言葉多くイルカに話す。
優しい表情でイルカを見ている。
「とにかく、お腹空いちゃってるんですよ。イルカ先生はご飯まだですよね?」
答えなきゃ。
そう思えば思うほど、イルカの体が熱くなる。
会いたいと、思っていたカカシが目の前に現れるなんて。
なかなか答えないイルカの前まで来たカカシは、顔を不思議そうに覗き込んだ。
「イルカ先生?」
途端、かあ、と顔が赤くなるのが分かる。
近づく顔に、自分の心臓の音が聞こえてしまうんじゃないか。
小さく息を吸い込んで落ち着かせようとした。
「・・・イルカ先生、顔赤いですよ」
不意に心配そうな表情に変わった。
その目は、イルカの表情を読みとろうとしている。
「ねえ、どっか具合でも悪いの?」
ただ顔を赤くして俯いたイルカに問いかける。
「な、・・・なんでも」
もどかしい自分の気持ちを隠そうと、笑顔を作ろうとした時。
カカシの長い指がイルカの頬に触れた。
「あ・・・・」
自分でも驚いた。
渇いた声。
熱を持った声で、体がビクついたのも、止められなかった。
耳まで熱い。
きっと真っ赤だろう。
カカシは、イルカに指を差しだしたまま、目を大きく見開き固まっている。
その真意に気づかないで欲しい。
ぎゅっと目を閉じて、言い訳を口にしようとした。
が、気が付けばカカシに腕を取られ横の茂みに押し倒されていた。
ザザザと草と体が擦れる音が、イルカの耳に大きく聞こえる。
「な、な、なにするんですか、・・・あっ!」
抵抗するもの出来ないくらい熱い息を耳元で感じた。
「そんな、俺が欲しかったの?」
その言葉にイルカの頭がくらくらとした。目の際に涙が溜まるのが分かる。
「ちっ、ちが」
その言葉は唇で塞がれ、歯を割り込んでくる舌。
拒む事なんて出来なかった。
カカシは、あの自分の声で全てを知ったのだ。
今押し倒されている事より、自分の考えていた事がカカシに知られてしまった事に羞恥心をかき立てられた。
上擦る自分の声も、止められない。
とろけるような口づけに唾液が口の端からこぼれ落ちた。
「ふ・・・、ぅ」
離れた唇を、名残惜しそうに見つめる。
その目をカカシが見つめていた。
「ちがわくないでしょ。ね・・・俺が欲しいんでしょう?」
理性が残るイルカの困惑気味の顔に優しくキスを落とす。
「じゃあ、俺がいなくてさみしかった?」
「さ、さみしいに決まってるじゃないですか・・」
赤く火照った顔でカカシを見上げた。
イルカに優しい顔を向けている。
「よかった・・・」
その言葉を受け取って、カカシの指が既に堅くなっている胸の先を撫で上げる。
それだけでイルカの体は小さく跳ねた。
長い指が愛おしげにコリコリと服の上からなじる。
カカシの唇が、もう片方の堅くなった突起に服の上から吸い上げ始めた。
イルカはもじもじと腰をくねらせ、声を上げる。
耳元では草がガサガザと音を立てた。
その音がイルカの耳に、時間をかけて伝わった。
「か、カシ先生・・・ここじゃ・・人が・・」
そう、ここは人通りが少ないとはいえ道の横。
草が多い茂っていても、人が通れば誰だって気が付く。
止まらないカカシの腕を押さえようとした。
「だいじょうぶ、イルカ先生が声出さなきゃ・・」
熱の持った声だと、イルカは感じた。
時間をかけられないと、焦っているのかもしれない。
するりと、服をたくし上げられた。
すぐに触れるカカシの唇。
それだけで、イルカは体が熱くなる。
カカシの手がゆっくりと下に伸び、内股を探り始める。
体がその度に期待と興奮で跳ねた。
「あ、ぁっ、っん」
いつもより声が出てしまう。
押さえようとしても、無理だった。
まさぐる手はイルカのズボンをおろし、双尻にかかる。
最奥に触るより前に、既に濡れているイルカ自身を掴んだ。
「ひっ、・・・・っ」
ぐちゅり、と音を立ててカカシの手が包み込む。
「こんなにもう濡れてる・・・」
うっとりとカカシは呟き、濡れた手の動きを早める。
そのままイルカの最奥へと指を伸ばした。
もう熱く解されたソコは、容易にカカシの指をくわえ込む。
2本、3本と増やされ、熱い中を掻き回す。
「はぁ、・・・っ、んんっ」
いつものようにカカシの行為を拒むイルカはいなかった。
カカシの肩を掴み、強請るようにカカシを見上げていた。
イルカは、ただカカシが愛おしかった。
愛おしくて、愛おしくて、カカシが欲しい。
「イルカ先生・・・」
カカシが涙がこぼれた痕に唇をおとす。
「大好き・・・イルカ先生」
イルカの眉根に皺が寄る。
心もぴくぴくと痙攣してしまったかのように、カカシの言葉に感じていた。
カカシの息も唇も熱い。
引き抜かれた指の代わりに熱い塊が押し当てられる。
「あ、ああぁぁっ」
一気に奥まで突き上げられて、イルカの背中にゾクリと痺れが駆けめぐる。
「あっ、ぁ、んっ」
声を出すまいと、歯を食いしばった。
暗くなった空。
赤みはすっかり溶けて無くなり、きらきらと星が輝き始めている。
その輝きが、自分の目の中で起きているだけなんだろうか。
カカシの銀色の髪が、ふさふさと揺れている。
すごく、キレイだ。
光る紅い眼。
と、カカシと目が合い、唇を貪るように奪われる。
「イルカ先生・・、背中、赤くなっちゃうから・・・四つん這いになって・・・」
激しく突き上げられながら、耳元で囁かれる。
カカシの言葉を理解するまでに時間がかかった。
「ぁっ、・・・や・・・」
腰の動きを止めたカカシを、涙でぼやけた目で見つめた。
脳に伝わった言葉に応えようと体を動かす。
待ちきれないのか、繋がったままカカシがグイとイルカの背中を返した。
震える膝と肘で地面に付く。
ひんやりとした地面。まだ青い葉っぱが更に多い繁ったように感じた。
赤くなってしまったのだろうか、イルカの背中に唇を押しつけてペロリと舐める。
がくがくと、震える体。カカシの少しの動きにさえ、感じずにはいられない。
ゆらゆらと、淫らに腰が勝手にうごく。
いや、動かしているのか。
「俺が欲しかった・・・?」
最初の言葉をカカシは口にした。
「・・・ん・・・や、ぁ・・・」
動かす腰をなぞり、繋がっている場所につつつと、指でなぞった。
繋がった場所を意地悪く指で触る。
「ね・・・答えてよ。・・・俺がすごく欲しかったんでしょう?」
そして、焦らすように軽く腰を前後する。
濡れた音だけがイルカの耳にジンと響く。
際に溜まっていた涙が、ポタリと地面に落ちた。
「・・・欲しかった、・・か、ら・・・おねが、い・・・」
カカシをくわえ込んでいる場所がきつく締まる。
恥ずかしくて、もどかしくて仕方がないんだろう。
カカシは渇いた上唇を舐め、一気に突き上げる。
「はぁ、ん、あぁ、・・・っ」
カカシを感じている。
いつも以上に。
長い指。
自分の腰を支える手。
背中に愛撫を繰り返す唇。
熱い息。
自分の名前を繰り返し囁く声。
こんなにも、カカシを欲している体。
声に出して、伝えたいのに、カカシの起こす律動に何もかもが真っ白になっていく。
自分を欲しているカカシ。
繋がっている、悦び。
ただ、カカシの想いを受け入れているだけじゃないと、伝えたい。
「はっ、・・・っく、」
限界だと言うかのようにカカシが声を詰まらせる。
ぎりぎりまで引き抜いて、ズンと奥まで突き入れられる。
カカシはイルカの中に白濁を放った。
熱い・・・。
そんなぼやけた言葉を浮かべて、イルカは意識を放した。
×××
柔らかい。
暖かい。
うっすらと感じた感覚に、イルカの瞼がぴくぴくと動いた。
心地よい疲れというのだろうか。
起きたくない。
でも、自分はどこにいるんだろう。
うっすらと瞼を開いた。
真っ黒な部屋。
ただ、月明かりで窓から空が見える。
見覚えがある。
カカシの部屋だ。
もぞり、と体を動かせば、すぐ横で静かに寝息を立てているカカシがいた。
イルカを包み込むようにして抱きしめたまま眠っている。
暗闇に慣れてきたイルカの目には、子供のような寝顔のカカシ。
ふふ、と思わず微笑んだ。
体はキレイにされ、寝巻きも着せられていた。
お腹が空いてただろうに、任務あけで疲れていたのか、そのまま自分と一緒に寝てしまったんだろう。
愛おしい。
カカシ先生。
微笑んだままカカシの寝顔をじっと見つめる。
こんな風にカカシの寝顔をしっかりと見たことが無かった。
いつも見られている事が殆どだから。
いつも先に寝てしまい、起きると、カカシは自分を見つめている。
優しい目で、愛おしむように。
今、自分はカカシを愛おしんでいる。
ゆっくりとカカシに唇を重ねた。
柔らかい唇。
離すと同時に、むにゅむにゅと口を動かしてカカシが動いた。
「・・・起きたの?」
まだ少し寝ぼけた声でカカシが口を開く。
「ええ、でもまた寝ます」
そう言って、カカシにぎゅうと抱きつく。
暖かいカカシの胸に顔をくっつける。
応えるように、カカシは優しく腕を回して抱きしめた。
そして、背中を数回撫でる。
「・・・どうしたの?」
いつもより、甘えているイルカに戸惑っているんだろう。
それでも、返される言葉はすごく心地良いほど優しい。
イルカは黙ったまま瞼を閉じた。
気持ちがいい。カカシの心音を聞きながら、イルカもうとうとと、まどろみ始める。
明日。
起きたら。
一番に貴方に好きだと伝えます。
夢心地に寝息を立て始めたカカシをしっかりと抱きしめて、イルカは心の中で呟いた。
もう冬だな、とイルカは呟いて小さく息を吐き出した。
季節の変わる、この匂いがイルカは大好きだった。
春から夏、夏から秋。
そして秋から冬。
子犬の様に鼻でくんくんと吸い込んだ。
----カカシ先生もこの匂いを感じてるかな。
赤い夕日を見上げる。
なんでだろう。
気が付くと、頭の中はいつも彼のことを考えてしまっている。
明日、明後日。帰って来るのはもうすぐ。
それだけで心が手で握られたような。
そんな自分に恥ずかしくなり少し顔が熱くなる。
本当だったら、彼と共に任務に出ている元教え子の事を考えていたはず。
経験も能力も少ないのはあの子達の方で、確かに心配はしているのだけど、それよりも先にあの人の顔が、声が、心の中にあって。
何考えてんだか。
歩きながら小石を蹴って道の端に飛ばす。
カカシの声がすごく好きだ。
低く、優しいトーンの声。
囁かれただけで、心の奥に染みわたって甘い痺れが背中を流れる。
自分を抱く時、まるで呪文のように耳元で囁く。
『好きです』
『好きです』
『愛してる』
その声を思い出して、頭のから背中へ。熱い塊が降りてくるようだった。
その言葉に自分は何も返していない。
俺もです。って、言うのは簡単なはずなのに。
カカシに言われただけで、胸が一杯になる。
自分の気持ちを、カカシは分かっているんだろうか。
ただ、一緒にいるだけでいいんだろうか。
それで、幸せなんだろうか。
そう言えば。
3日会っていない。
3日も声を聞いていない。
3日もあの人の熱を感じていない。
待っていればもうすぐ帰ってくるのに。
突然気分が暗くなった。
情けないと思う。
カカシの前では強がって、彼の想いを嫌々受け入れてるみたいな態度をとって。
本当は、カカシ先生が俺を想う以上に、彼に心を奪われている。
そんな自分を悟られるのが怖いんだ。
同じように甘えればいいのに、それがまだ出来ないでいる。
自分の前にいるカカシが全てでは無いと分かっている。
限られた表情しか見ていないと思うし、感情だってそうだ。
きっと。自分よりは遙かに大人だと思う。
恋愛に関しても自分より経験がある。
自分の、この莫迦のようなカカシへの想いが伝わったら、飽きてしまうんだろうか。
くだらない。
駄目だ。
ふるふると、イルカは頭を振った。
子供の頃から、悪い方へ悪い方へと考えてしまう癖がある。
自分が傷つくのが怖いから。
自己防衛の為に。
早く会いたい。
会えばきっとこんな気分が砕かれる。
会って、優しく抱きしめて欲しい。
あの声で、自分を呼んで欲しい。
『イルカ先生』
そうなんだ。自分の名前を呼ぶ。それがすごく心地良い。
『イルカ先生』
薄くて形のいい唇。
抱かれる時はすごく熱い。
熱を持ったあの唇が、自分の名前を囁く。
『イルカセンセイ』
『・・・イルカセンセイ』
この声がすごく好きなんだ。
「イルカ先生」
「・・・え」
前にカカシが立っていた。夕日が堕ち始め、辺りも暗くなっている。
本当にカカシが目の前にいる。
ドクン、と心臓が一気に血を駆けめぐらせた。
「か、カカ、シ先生・・・いつからそこに・・?」
イルカの言葉に、目尻を下げて安心したような顔をした。
「さっきからイルカ先生を何回も呼びましたよ。なのに、難しい顔して、気づかないから」
少し距離をおいた場所からイルカの前まで歩き出す。
ドクン ドクン
イルカの心知るわけでもないカカシは、嬉しそうな顔をしている。
ぎゅうと拳を胸の上に置いたまま、イルカはカカシを見つめていた。
ああそうだ、とカカシの唇が口布の下で動いたのが分かった。
「ねえ、早めに任務が片づいたんです。久しぶりにどっか食べに行きます?」
ドクン
「それか、イルカ先生の家にしますか?今回の任務で暖かいご飯全然食べれなくて。俺はどっちでもいいですけど」
いつもより、カカシは言葉多くイルカに話す。
優しい表情でイルカを見ている。
「とにかく、お腹空いちゃってるんですよ。イルカ先生はご飯まだですよね?」
答えなきゃ。
そう思えば思うほど、イルカの体が熱くなる。
会いたいと、思っていたカカシが目の前に現れるなんて。
なかなか答えないイルカの前まで来たカカシは、顔を不思議そうに覗き込んだ。
「イルカ先生?」
途端、かあ、と顔が赤くなるのが分かる。
近づく顔に、自分の心臓の音が聞こえてしまうんじゃないか。
小さく息を吸い込んで落ち着かせようとした。
「・・・イルカ先生、顔赤いですよ」
不意に心配そうな表情に変わった。
その目は、イルカの表情を読みとろうとしている。
「ねえ、どっか具合でも悪いの?」
ただ顔を赤くして俯いたイルカに問いかける。
「な、・・・なんでも」
もどかしい自分の気持ちを隠そうと、笑顔を作ろうとした時。
カカシの長い指がイルカの頬に触れた。
「あ・・・・」
自分でも驚いた。
渇いた声。
熱を持った声で、体がビクついたのも、止められなかった。
耳まで熱い。
きっと真っ赤だろう。
カカシは、イルカに指を差しだしたまま、目を大きく見開き固まっている。
その真意に気づかないで欲しい。
ぎゅっと目を閉じて、言い訳を口にしようとした。
が、気が付けばカカシに腕を取られ横の茂みに押し倒されていた。
ザザザと草と体が擦れる音が、イルカの耳に大きく聞こえる。
「な、な、なにするんですか、・・・あっ!」
抵抗するもの出来ないくらい熱い息を耳元で感じた。
「そんな、俺が欲しかったの?」
その言葉にイルカの頭がくらくらとした。目の際に涙が溜まるのが分かる。
「ちっ、ちが」
その言葉は唇で塞がれ、歯を割り込んでくる舌。
拒む事なんて出来なかった。
カカシは、あの自分の声で全てを知ったのだ。
今押し倒されている事より、自分の考えていた事がカカシに知られてしまった事に羞恥心をかき立てられた。
上擦る自分の声も、止められない。
とろけるような口づけに唾液が口の端からこぼれ落ちた。
「ふ・・・、ぅ」
離れた唇を、名残惜しそうに見つめる。
その目をカカシが見つめていた。
「ちがわくないでしょ。ね・・・俺が欲しいんでしょう?」
理性が残るイルカの困惑気味の顔に優しくキスを落とす。
「じゃあ、俺がいなくてさみしかった?」
「さ、さみしいに決まってるじゃないですか・・」
赤く火照った顔でカカシを見上げた。
イルカに優しい顔を向けている。
「よかった・・・」
その言葉を受け取って、カカシの指が既に堅くなっている胸の先を撫で上げる。
それだけでイルカの体は小さく跳ねた。
長い指が愛おしげにコリコリと服の上からなじる。
カカシの唇が、もう片方の堅くなった突起に服の上から吸い上げ始めた。
イルカはもじもじと腰をくねらせ、声を上げる。
耳元では草がガサガザと音を立てた。
その音がイルカの耳に、時間をかけて伝わった。
「か、カシ先生・・・ここじゃ・・人が・・」
そう、ここは人通りが少ないとはいえ道の横。
草が多い茂っていても、人が通れば誰だって気が付く。
止まらないカカシの腕を押さえようとした。
「だいじょうぶ、イルカ先生が声出さなきゃ・・」
熱の持った声だと、イルカは感じた。
時間をかけられないと、焦っているのかもしれない。
するりと、服をたくし上げられた。
すぐに触れるカカシの唇。
それだけで、イルカは体が熱くなる。
カカシの手がゆっくりと下に伸び、内股を探り始める。
体がその度に期待と興奮で跳ねた。
「あ、ぁっ、っん」
いつもより声が出てしまう。
押さえようとしても、無理だった。
まさぐる手はイルカのズボンをおろし、双尻にかかる。
最奥に触るより前に、既に濡れているイルカ自身を掴んだ。
「ひっ、・・・・っ」
ぐちゅり、と音を立ててカカシの手が包み込む。
「こんなにもう濡れてる・・・」
うっとりとカカシは呟き、濡れた手の動きを早める。
そのままイルカの最奥へと指を伸ばした。
もう熱く解されたソコは、容易にカカシの指をくわえ込む。
2本、3本と増やされ、熱い中を掻き回す。
「はぁ、・・・っ、んんっ」
いつものようにカカシの行為を拒むイルカはいなかった。
カカシの肩を掴み、強請るようにカカシを見上げていた。
イルカは、ただカカシが愛おしかった。
愛おしくて、愛おしくて、カカシが欲しい。
「イルカ先生・・・」
カカシが涙がこぼれた痕に唇をおとす。
「大好き・・・イルカ先生」
イルカの眉根に皺が寄る。
心もぴくぴくと痙攣してしまったかのように、カカシの言葉に感じていた。
カカシの息も唇も熱い。
引き抜かれた指の代わりに熱い塊が押し当てられる。
「あ、ああぁぁっ」
一気に奥まで突き上げられて、イルカの背中にゾクリと痺れが駆けめぐる。
「あっ、ぁ、んっ」
声を出すまいと、歯を食いしばった。
暗くなった空。
赤みはすっかり溶けて無くなり、きらきらと星が輝き始めている。
その輝きが、自分の目の中で起きているだけなんだろうか。
カカシの銀色の髪が、ふさふさと揺れている。
すごく、キレイだ。
光る紅い眼。
と、カカシと目が合い、唇を貪るように奪われる。
「イルカ先生・・、背中、赤くなっちゃうから・・・四つん這いになって・・・」
激しく突き上げられながら、耳元で囁かれる。
カカシの言葉を理解するまでに時間がかかった。
「ぁっ、・・・や・・・」
腰の動きを止めたカカシを、涙でぼやけた目で見つめた。
脳に伝わった言葉に応えようと体を動かす。
待ちきれないのか、繋がったままカカシがグイとイルカの背中を返した。
震える膝と肘で地面に付く。
ひんやりとした地面。まだ青い葉っぱが更に多い繁ったように感じた。
赤くなってしまったのだろうか、イルカの背中に唇を押しつけてペロリと舐める。
がくがくと、震える体。カカシの少しの動きにさえ、感じずにはいられない。
ゆらゆらと、淫らに腰が勝手にうごく。
いや、動かしているのか。
「俺が欲しかった・・・?」
最初の言葉をカカシは口にした。
「・・・ん・・・や、ぁ・・・」
動かす腰をなぞり、繋がっている場所につつつと、指でなぞった。
繋がった場所を意地悪く指で触る。
「ね・・・答えてよ。・・・俺がすごく欲しかったんでしょう?」
そして、焦らすように軽く腰を前後する。
濡れた音だけがイルカの耳にジンと響く。
際に溜まっていた涙が、ポタリと地面に落ちた。
「・・・欲しかった、・・か、ら・・・おねが、い・・・」
カカシをくわえ込んでいる場所がきつく締まる。
恥ずかしくて、もどかしくて仕方がないんだろう。
カカシは渇いた上唇を舐め、一気に突き上げる。
「はぁ、ん、あぁ、・・・っ」
カカシを感じている。
いつも以上に。
長い指。
自分の腰を支える手。
背中に愛撫を繰り返す唇。
熱い息。
自分の名前を繰り返し囁く声。
こんなにも、カカシを欲している体。
声に出して、伝えたいのに、カカシの起こす律動に何もかもが真っ白になっていく。
自分を欲しているカカシ。
繋がっている、悦び。
ただ、カカシの想いを受け入れているだけじゃないと、伝えたい。
「はっ、・・・っく、」
限界だと言うかのようにカカシが声を詰まらせる。
ぎりぎりまで引き抜いて、ズンと奥まで突き入れられる。
カカシはイルカの中に白濁を放った。
熱い・・・。
そんなぼやけた言葉を浮かべて、イルカは意識を放した。
×××
柔らかい。
暖かい。
うっすらと感じた感覚に、イルカの瞼がぴくぴくと動いた。
心地よい疲れというのだろうか。
起きたくない。
でも、自分はどこにいるんだろう。
うっすらと瞼を開いた。
真っ黒な部屋。
ただ、月明かりで窓から空が見える。
見覚えがある。
カカシの部屋だ。
もぞり、と体を動かせば、すぐ横で静かに寝息を立てているカカシがいた。
イルカを包み込むようにして抱きしめたまま眠っている。
暗闇に慣れてきたイルカの目には、子供のような寝顔のカカシ。
ふふ、と思わず微笑んだ。
体はキレイにされ、寝巻きも着せられていた。
お腹が空いてただろうに、任務あけで疲れていたのか、そのまま自分と一緒に寝てしまったんだろう。
愛おしい。
カカシ先生。
微笑んだままカカシの寝顔をじっと見つめる。
こんな風にカカシの寝顔をしっかりと見たことが無かった。
いつも見られている事が殆どだから。
いつも先に寝てしまい、起きると、カカシは自分を見つめている。
優しい目で、愛おしむように。
今、自分はカカシを愛おしんでいる。
ゆっくりとカカシに唇を重ねた。
柔らかい唇。
離すと同時に、むにゅむにゅと口を動かしてカカシが動いた。
「・・・起きたの?」
まだ少し寝ぼけた声でカカシが口を開く。
「ええ、でもまた寝ます」
そう言って、カカシにぎゅうと抱きつく。
暖かいカカシの胸に顔をくっつける。
応えるように、カカシは優しく腕を回して抱きしめた。
そして、背中を数回撫でる。
「・・・どうしたの?」
いつもより、甘えているイルカに戸惑っているんだろう。
それでも、返される言葉はすごく心地良いほど優しい。
イルカは黙ったまま瞼を閉じた。
気持ちがいい。カカシの心音を聞きながら、イルカもうとうとと、まどろみ始める。
明日。
起きたら。
一番に貴方に好きだと伝えます。
夢心地に寝息を立て始めたカカシをしっかりと抱きしめて、イルカは心の中で呟いた。
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